三浦徹先生(お茶の水女子大学教授)講演会

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     熊本県高等学校地歴公民研究会では、2年に1度「日本史・世界史合同部会」を開催し、巡検や講演会などを実施しています。本年度はお茶の水女子大学教授の三浦徹先生(中東イスラーム史)をお迎えし、「イスラームは何を語るか:高校教育との接点」というタイトルでご講演いただきます。入場無料です。興味ある方はぜひご参加ください。
       日 時 : 平成26年8月11日(月)  14:00〜
       場 所 : 熊本市立必由館高校(視聴覚室)

    2012年秋調査余滴

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      実は滞在中には書けなかったのですが、今回の調査で瞥見したことを、思い出すままに書いてみます。

      。裡舛蓮館内外のかなり大規模な補修工事中でした。改装ではなくて、傷んできた箇所の補修だろうと思います。いつも3階の大型文書室を使うのですが、普通は文書収蔵庫から文書を積んで走ってくる電動カートが走り回る空中回廊*しかない、3階から入り口ホールの吹き抜けを見下ろす窓のところに、作業中の方々が足場を組んで大勢行ったり来たり。

      *この空中回廊は、入り口ホールで大きく左右に分かれている館の構造上、入り口右手の奥のどこかにあるらしい文書収蔵庫から、入り口左手の2,3階の閲覧室に、電動カート(ときに2連結のこともあり)に文書を積んで館員さんが運ぶとき専用のコンクリートの回廊です。緩いカーブが渦巻くように続いています。言ってみれば、室内に作った空中ネコ道の大型判。いちどあのカートに乗ってみたいと、いつも思います。ちょっとした遊園地みたい。

      ▲轡腑奪廚蓮圧倒的にWWIIの本ばかり。置いてある雑誌も、勲章についてのもの(毎月か隔月か、定期刊行するほど書くことがあるのでしょうかしらね)もあり。戦争史の月刊誌もあり。軍国主義の気配はみじんもない現状ですが、しかし、イギリス人は戦史が好き。Family Historyとはまた別に、Military HIstoryというジャンルが発達してきているようで、これを、ふつうの国民のかたがたが、楽しみにしらべているようです。まあ、ボードの上にタンクやら兵士やらをならべて戦場を再現しては、じぶんならこう戦う、をやる、元祖War Gameはこの国で生まれたものですから。あとは今回、ロンドン市の歴史(ただし近代)の本がちょっと増えたように思いました。もちろん、Family History向けの本棚も(数量的には)充実。中世史・近世史で新刊本を探すなら、ウェブか、市内の大きな本屋にいくしかなさそうです。

      E文庫が、正式に了解を得てリンクを張っているAALT(Anglo American Legal Tradition)の、裁判関連記録集の撮影は、もう何年目でしょうか、まだ続いていて、今何を撮っていますかと聞いたら、もうPlea Rollsは全部終わって、今はJUSTをやっているということでした。一部進んではいたのですが、本格的に撮影し始めたようです。Cのシリーズ(Chancery関連)も、まだ完全には終わっていないようにも思うのですが、中世については、もうかなり進んでいるようでもあります。イギリスの裁判記録集は、近世になると、ものによっては、屈強の偉丈夫でもないと持てないくらいの大部ですから、それが全部、館外どころか国外にいながらにして閲覧できるこの企画のすばらしさは、20年前には夢見ることさえ思いつかなかったほどのものです。リンクから、一度、ごらんになってみてください。(以前に、是非紹介したい、リンクを張らせて欲しい、とお願いしたら、大変喜んで頂きました。アメリカの大学が基金を出してやっている企画ですが、閲覧は一切無料です。すばらしい企画なのに、テーマが地味だからか、アメリカでもそれほど反響がない様子でした。)
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      V&A Museum(2012年春イギリス調査旅行余滴2)

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         今日から夏時間になって、夕方が明るいままです。春分をすぎると、どんどん日足が伸びるのが北国ですが、朝がたは結構冷えて、最高気温が出るのは、夏時間だと、夕方の4時近くになります。仕事が終わってからの時間が楽しめるには違いないのでしょうが・・・体力がない上に早く目が覚めてしまうようになると、なんだか、ちょっと時間をもてあまします。

         宿からはVictoria and Albert Museum までわずか3駅であることに、初めて気づきました。実は、14年前に留学したときには入館料を取られたので、それきり、無縁のつもりでいたのですが、日曜の所在なさに、念のためウェブチェックしたところ入館料はなしになっていたので、気軽に出かけました。

         どちらかといえば、工芸の紹介に力点があるのですが、中世からルネサンスの工芸品のコレクションは、おそらく歴史的観点というよりも美術的技巧的観点から選ばれた、良いものがあります。どちらかといえば中世のものは少ないのが、ちょっと寂しいですけれども。規制の考え方がずいぶん変わっていて、どうも写真は撮り放題らしいことに、入ってから気づきましたが、カメラがないほうが、見ることに集中できるには違いありません。無料だし定宿から近いし、またくればいいや、と、気楽に見ました。

         ヨーロッパ規模だと15世紀までのコレクションですが、イギリスの生活用品ですと、むしろ、1500年以降のもののほうが、たくさん集められているようです。美術工芸なので、貴族とまではいかないにしても、upper classがお使いだったものがほとんどですが。そもそもそんな高級品でもないと伝来していないでしょうし。近世近代史専攻の方は楽しめると思います。建物が贅沢で、集められているものに「大物」が多いので(芝居で言えば大道具のたぐいですね)、展示の仕方もちまちましていなくて、気分はゆったりするようでした。

         ただ、趣旨はいわゆる歴史博物館ではないので、ショップには、展示されている中世の事物の絵はがきのようなものは一切ありません。ほしければやはり自分でカメラを持ってくるしかないようです。同じく、美術工芸の展示教育が主目的なので、展示されているものの歴史的由来の説明は、かならずしも十分ではありません。由来の脈絡から切り離されてしまった古い物というのは、美しいだけにかえって、なにか非常にもろい、寂しい感じがするような気もしますが・・・わたくしのほうが、ものに時間が乗っていることに存在感を感じる、という、あまり素直でないものの見方をするようになってしまっているのかもしれません。美術工芸品の蒐集としては、知って楽しむよりも、見て楽しむことが、やはり主眼なのでしょう。。。そもそも、それが、博物館の、正しい見学の仕方なのかもしれませんが。

         それにしても、昔はもう少し、古い時代の工芸品のレプリカもショップにあったような・・・ヴィクトリアンのものさえ、ありません。Arts and Crafts 以後のものの意匠を使った現代もののデザインが主です。工芸に力を入れていますから、お裁縫に使うようなものも少しはおいてあります。はさみとかものさしとかチャコとかピンとか・・・手芸好きさんにはいいのかも。

         今年が女王陛下のご在位60周年ですから、それ関係の特別展示もしています。疲れたので、そちらは見ませんでしたが、ショップに、普通はあまり見ない、お若いときの、非常に美しい写真が出ていました。プロの写真家が撮ったポートレートでしょうが。

         夏時間になった初日の11時、昨日まではこれが開館時間だったはずですが、駅からあまりに大勢のひとがぞろぞろ歩いているのでびっくりしたら、ほとんどが、自然史博物館のほうに曲がっていきました。子供が大勢・・・イギリスでも、恐竜は人気です。たしか昔は一時閉館になったこともあったと思いますが、子供は必ず一度は恐竜の化石を見たがるし、この国は、いつ来ても、どこから湧くの、と聞きたくなるくらい、3歳から7歳くらいの子供であふれているように見えるので、観客が途絶えることはないのでしょう。

         大英博物館が、どうも、いろいろなひとが手当たり次第に集めた、ものすごく貴重な物がたくさん集まっている巨大な物置のように感じられるのと比べると、蒐集も、展示も、相当に意識的なものと工夫が感じられて、それがうっとうしいというのでなければ、見終わったときの疲労感は、こちらのほうが少ないのではないかという気がします。

         滞在もあと数日です。月曜休館になってしまっているので、明日は日本に本を郵便で送ったら、することはあまりありません。郵便局まで段ボールひとつをどうやって持って行くかが問題ですが。なんどか休みながら行くしかなさそうです。これ以上買い物をすると、お持ち帰りになってしまうので、本屋にはもう行かないほうがよさそうだし。そのあとはぎりぎりまでNAで文書の写真撮りです。来たころに比べてずいぶん暖かくなりましたが、日本はことしも寒い春らしいので、着てきた服を着て帰っても大丈夫らしいのは、むしろ助かります。

        イギリスのマニュスクリプト講習会(2012年春海外調査余滴)

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           National Archivesのロッカールームには、NAだけでなく、いろいろな団体のパンフレットが置かれているのですが、そこで、イギリスのラテン・パレオグラフィーの案内を見つけました。Keel University で(North Staffordshireということですが、どこにあるのか、しりません。もとポリテクニークだったのかな)、今年の夏が35回目のようです。Latin and Palaeography Summer School 21-27 July 2012とあります。Family History をやっていて、ラテン語の古文書を読む必要があると考えているひと向けらしいことが書いてあります。
           中世ラテン語入門・中世古文書入門・16/7世紀の遺言書集・中級コース・1292年のランカシャー・エア・ロールというコース立て。宿泊コースだと、宿舎により750ポンドと720ポンド。一週間のコースとしては高くはないかも。通いだとディナーつきで420ポンド、ディナーなしで400ポンドという参加料金ですから。
           講師等の細かいことはビラ一枚のパンフレットには書いてありません。
          URLは、www.keele-conferencemanagement.com/lpss2012  のぞいてみるのもおもしろいかも。

           前にもお話ししたかもしれませんが、NAのホームページも、ラテン手書き文書・文字の講座のようなものがあります。あったはずだし、削除されていることはないだろうと思います。近世英語の手書き文字のパンフレットのようなものは、ショップで売っていますが、近世になると、だいたい推測が付くので、というか、実はブラック・レターのほうが、18,19世紀の鉄ペン書きの英語の文字より読みやすいような気もするので、これは、講習会まではいらないのだろうな、と思います。
           近代人の手書き文字が読みにくいのは、日本と同じかな。前回着たとき、MSS自体は読めるのに、これを整理した19世紀か20世紀はじめらしい目録の字が読めなくてこまりました。(北野)
           

          2012年春イギリス調査・文書館風景管見

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             予定では昨年秋だったのですが、忙しくて年度末に駆け込みで出国しました。まだNational Archivesに行っただけですが、1年ちょっとのあいだにあちこち改修工事が進んでいるようです。閲覧室の椅子が全部新調されていました。大型予算がついたのかもしれません。これはおそらく、Family Historyブームがどんどん進んで、来館者が増えていることによるものでしょう。今やbookshopの棚はほとんどがこれ関係の本で埋め尽くされています。19世紀のセンサス以来、国民に関する情報を多く持つ国で、いわゆる公文書保管ルールの期限がきたものは、すべて閲覧可能(誰でも、です)になっていることについて、個人情報を国が握るのはどうだの、それを閲覧者を選ばずに閲覧させるのはどうだの、という議論がある気配は、わたくしは感じたことがありません。みなさん、ご先祖とかご親戚とかがどういうひとで、自分までどうつながっているかを、楽しそうに調べているようです。。。。それを知ってどうするんだ、ということは、歴史に携わるひとには、意味のある質問ではないことがわかるだろうと思います。。。ですが、昔から、職業なり出身地なり、場合によっては姓なりの、「似たようなご先祖を持つ人友の会」があるのが、おもしろいところです。  自慢できるようなご先祖を持つ人だけが探求に来るのではないので、Family History 向けの本の棚に、今回、Criminal Ancestors という本をみつけました。もともと、お年寄りの会話から、先祖に犯罪で殺されたひとがいるほうが幅がきくらしい(幽霊になっていれば最高!)ことは察知していましたが、どうも、加害者のほうでも良いみたいです。  まあ、猟奇殺人の話が好きなだけではなくて、間欠的ながら実際に起こりもするお国柄ですから、国民性の一環なのかもしれませんが。  純然たる過去の話についてはブームがあり、去年はひたすらTudorsブームでしたが、今年はどうやら、タイタニック号沈没事件がブームのようです。映画かドラマがあったのでしょうか。それはまだ不案内です。もちろんWWIとIIはコンスタントなテーマです。ただし、いわゆる銃後の守りについてのコーナーは増えてきているようです。ジェンダー感覚の転換か、あるいは、女性のFamily Historyanが増えたことの反映なのか。20世紀全般が、個人の記憶の域を超えた、ひとつの歴史になっていく時期であることはまちがいないでしょう。訪れているお年寄りはもう、自分のこととしてではなく、上の世代のこととして、調べものをしているようです。  今後伸びていくテーマとしては、どうも、移民がありそうな気配。かつての植民地から、国策に沿って(もっと前だと、国策によって追放されて、になるわけですが)移住したひとたちの子孫が、ご先祖を調べに大挙してやってくる・・・かな。お天気が良い日と、そうでない日では、館内の混み具合が全然違うので、無理してまでやってくるひとは少ないように感じます。秋から冬は移動が難儀でないこと、夏は、館内は冷房が効いていることが、ひとが多い理由とみました。これからはきっと、来館者が増えることでしょう。。。。お年寄りが多いせいか、集団で来られるケースも多いせいかはしりませんが、Family Historian が多い日は、館内静粛は、事実上強行不能なルールです。自分の調べ物に集中したいひとは、ipod必携。どうせ音がするなら、好きな音楽のほうがいい、ということでしょう。それでも遮断は難しい音量でお話になるかたが多いですが。なまりのある英語だから中身まではわかりにくいのが救いのようではあるものの、後ろで長々と立ち話をされると、街角で調査しているような気分になってくるのもたしかで・・・わたしも、お天気が良い日は、iPodをもって出かけることにしようと思います。(北野)

            2011年度夏 イングランドにおける研究

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              今年のイングランド滞在は、中世ブリテン史研究会の巡見と連動したこともあり、7月15日から8月29日の長きにわたった。その間、Battle Conference (York: 7/28-8/1) に出席し活発な意見交換をおこなった。とくにNicholas Brooke教授の報告は革新的意義をもつもので、久しぶりに興奮を覚えた。今年度の滞在の一番の目的は、中世イングランド史における海民と漁業に関する研究のための史料収集と現在執筆中のThe moneyer in long-eleventh century Kentに関する史料収集である。以下続く(鶴島博和)

              韓国旅行顛末記

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                2月14日と15日に、The East Asian Journal of British Historyの発刊のことで韓国釜山にi行ってまいりました。参加者は日本側から 秋田茂さんと鶴島、韓国側からYoung-suk Lee, Joonglak Kim, Seungarae Cho、 Youngkwon Chungの4名の計6名の参加でした。

                最終的にはThe East Asian Society of British Hisotry(東アジアブリテン史研究会)の設立で合意しました。現時点では、会員は6名からの出発ですがこれから、会則に従って会員を募ります。当日は私の作成した会議次第と若く才気にあふれたYoungkwon Chungさんの作成したAssociation ArticlesとBy-Laws にしたがって議論が進みました。Association ArticlesとBy-Lawsは現在修正中ですので完成次第掲示いたします。

                初代会長はYoung-suk Leeさんと鶴島博和のco-chair体制でいくことになりました。それは、主要な会の活動が毎年の上記ジャーナルの発行と三年に一回の大会を、韓国側と日本側が交互に行うためです。これに伴い上記雑誌は正式に学会誌となりました。将来的には学術団体を目指して進んでいく予定です。

                さて、大変な旅行でした。14日釜山は大雪、とはいっても札幌育ちの私にはただの雪でしたが、韓国では南国釜山、空港は閉鎖の大騒ぎでした。ソウルや光州や慶州などあちらこちらから集まっていただく以上、飛行機が飛ばないだけで行かないわけにはいきません。ついに高速船ビートルで冬の対馬海峡を横断しました。半分船酔いしながら釜山に着いたのが17時。しかし、車も麻痺。山がちの釜山。丘の上にあるホテルまでタクシーは行ってくれません。なんせノーマルタイヤ。しかも韓国側と連絡が取れず、ホテルに電話しても私の予約がないといわれ、韓国の方のお名前を正確に発音できず、誰が宿を取ったのかもわからず、変なおじさんの車に乗って駅まで行きました。1万W。ぼられました。コーヒーを飲みながら途方にくれて駅前で時間をつかいました。その後何とかChungさんの携帯番号が判明して迎えに来てもらいました。秋田さんはなんと、ソウルに飛び、そこからKTXで釜山に来ました。到着したのが23時。歩いて凍った坂を上ってホテルへ。翌日は晴天でした。会議のあと魚市場で鯛や平目の刺身、鮑と牡蠣をご馳走になりました。アンコウです



                まだ到着しない秋田さんを待って駅前の食堂でアンコウをつまむ私たちです(14日)


                 







                左からLeeさん、ひとりとばしてKimさん、秋田さん、Chungさん。Cho先生は奥様のお加減がよくなく夜帰られました。

                (15日昼)












                鮑がたくさん





















                朝の釜山(ホテルの窓から:15日朝)


                帰りはスムーズ。帰宅したの22時でした。

                今年のセンター試験世界史、雑感

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                   【概略】
                   2006年までは世界史AとBとの共通問題が存在したが、2007年以降はなくなっている。この点は今年も踏襲された。以前はよく出題されていた、グラフや表の数値を読み取る問題はA・Bともに出題されていない(最近のグラフ問題は、時代を問うことに使われることが多く、あまり意味のないことだという批判があったせいかもしれない。)。A・Bともに、「何が」「誰が」という問いだけでなく、「いつか」という問いが目立つようになってきている。

                  【世界史A】
                   昨年出題されなかった地図問題(それも3問)、問い方が難しい問題がみられたこと、前近代の問題が占める割合が増えたことなど、今年度は難化したと思われる。

                  【世界史B】
                   文化史の占める割合が増加しているが、いずれも過去に出題されたことがある事項ばかりで(インターネットの普及時期は初めての出題だが)、正解を導くのは容易である。

                  【総括】
                   センター試験もそろそろネタ切れとなってきたようだ。英語や国語では出典文を再利用する方針が決定しているが、世界史の場合、「言い回しは異なっても内容は同じ」という選択肢がよくみられる。これは致し方ないことであろう。高校では、「過去問演習」が最良の受験指導ということになる。
                   ただ、リード文・設問ともに魅力的なものが近年減っているのは事実である。2006年の世界史B(本試)での”『千夜一夜物語』の翻訳はヨーロッパと中東の文化接触”というリード文や、2001年の世界史A(追試)での「カートライトによる力織機、ジョン=ケイによる飛び梭(飛び杼)、ハーグリーヴズによるジェニー紡績機」の発明の順番を問うような問題は、もう期待できないのであろうか?
                   センター試験の問題は、東大の入試問題と同じく、入試問題の指標だと思う。個性的な設問の出題はこれから難しいと思うが、リード文はわれわれを唸らせる、刮目させるようなものを期待したい。

                  (熊本北高校 平井英徳)

                  Tudors, Tudors!(2010/11年調査余滴2)

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                     前投稿の中世史への関心は、今のイギリスのひとたちの歴史への関心のトップではありません。とっぷはおそらく、なんと言っても「チューダーズ」。昨年から放送が始まった歴史テレビドラマで、もういくつかのシリーズが出ています(しかし、どうやらヘンリー8世だけでシリーズは終わるらしいです。お子さんたちのことは扱わないらしい)。

                     いわば日本の歴史大河ドラマみたいな人気(あるいはもっとかもしれません。大変ポピュラーらしいです)。本やの棚はテューダー期のさまざまな解説から、「テューダーさんちのひとたち」の解説やらであふれています。もし近世を専攻していたら、あと一箱、本を送らなければならなかったでしょう。

                     ヘンリー8世といえば、スキャンダルの帝王でもあるし、宗教改革によってこの国の現在の土台の半分を作ったひとでもある。いろいろな角度から描くことができるひとです。また主役の俳優がイケメン(ってことは、実は、肖像画には似てない。第一面長だもの)。

                     日本でも去年の秋からケーブルテレビで放送され、11月末には吹き替え版の放送も始まっていました。演出が「濃い」ので、わたくしはパスしましたが。人間ドラマとしても楽しめるところが、かえってちょっと、なんだか、つらくって。

                     テューダー期は、国事はもちろん、個人についても、中世とは比べものにならないくらい史料が豊富なので、王家のひとびとだけでなく、それを取り巻く貴族から、侍女など半分創作上の人物まで、歴史考証もかなりしっかりしたものらしいです。

                     研究書(かどうかわからないものも含めて)のテーマもかなり分岐していて、これからテューダー期を扱おうというひとも、もういちど見直してみようというひとも、当面、読む本に困ることはないでしょう。

                     テューダー期といえば、文化史的にも、イギリスのルネッサンスが花開いた時期ですから、コスチュームからアクセサリーから生活物品まで、画面はかなりきらびやかです。(しかし、もうちょっと肖像画に似た俳優は選べなかったのか?最初の王妃アラゴンのキャサリンが漆黒のたっぷりした髪で出てきたときには、正直、参りました。まあ、今の俳優でほほがふっくらした人を探すのは無理なのかもしれないけれども・・・)


                     去年初回シリーズが始まったときの人気はすごかったようです。イギリスはもともと家族・ご近所ドラマの好きなひとが多い国ですが、これはEast Enders の対極バージョンかい、と言いたいくらいの、なんか、ポッシュなご近所のおうちの中のドラマを見るみたいな感覚のようだった。

                     この人気は今も続いていて、で、好機と捉えた研究者から、チャンスと捉えた歴史作家まで、こぞってこの一年に本を書いた。前投稿の中世への関心が、おいしいけれども一人で食べるランチのサンドイッチなら、こちらは、友人と楽しむ豪華ディナーくらい、ある意味でランクが上です。

                     中世の名もない庶民が脚にゲートル巻いて耕しているところも懐かしいけれども、宮廷の豪華な衣装のバンケットだのなんだのはもっとすごい。みたいな。


                     日本でも人気のようで、もう吹き替え版のDVDが発売になっているはずです。地上派デジタルでもそのうち放送が始まるかもしれません。関心のある方は、いちど御覧になってはいかがでしょう。

                    中世史についての関心(2010/11年調査余滴1)

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                       滞在中に、文書館でも、まちの本やでも、中世史についての関心の高まりを示すような本をかなり見ました。この動向は去年あたりからはっきりしてきましたが、邦貨換算で2000円程度で買えるペーパーバックで、中世のひとびとの生活を生き生きと追体験させてくれるような「時間旅行もの」がいくつも出ています。ざっと覗いただけですが、内容はかなり正確で、こういう読み物があったら、大学で中世史を専攻しようと思う高校生がもっと出るかもしれない、と思いました。そのうち、奏文庫から翻訳を出版したいと思っています。本を決めるについても、翻訳作業についても、皆さまのお知恵をお借りすることが出てくると思いますので、そのときはよろしくお願いします。



                       前投稿にもありましたが、その意味でも、古い地図をいろいろ眺められることはとても大切だと思います。それと現在の風景を比較できるともっと良いですね。イギリスの地方には、村のすがたや地名から、古い時代を再現することが比較的難しくない場所がいくつもあります。文書館に通っている一般の方が多いのは、ひとつには、利用が完全無料だからですが、もうひとつには、もともと家族史family historyの伝統があり、これが一般のひとびとの、ご先祖のことをもっと知りたい、という気持ちと合致したからです。でも最近、もうひとつ、自分が住んでいるところの昔のことをもっと知りたい、というlocal historyの関心からやってきている方も増えたようで、文書館所蔵の地図を広げているひとをよく見ます。



                       もうひとつの、かなりはっきりした中世史の動向は、個人の伝記、とりわけ王や貴族の伝記という、20世紀中期頃まではかなり一般的だった著作が、またたくさん出始めたということです。偉い人、という観点からではなくて、もっと親しくなろう、という観点からのような印象で、以前の伝記に比べると、政治史よりも社会史や文化史に比重がかかったものになっているようです。20世紀後半から盛んになった社会文化史の研究動向が、個別の人物研究にまで浸透できるまでに一般的になった、という印象があります。



                       その反面、もう少し堅い目の、制度や抽象的観念を掘り下げる研究が、全く見られないのは、少し心配なところです。しかしこれも、今そういったことについて出版の水面下で調査研究が進んでいるものと思われるので、数年後には、一見、いきなり現れた、というかたちで、そういった本が本やの棚やウェブの出版情報に並ぶものと思います。



                       日本でも、日本史上の人物について、もっと親しくなろう、という感覚からの関心が高まっているようですが、イギリスでも同じような感覚があるのを感じます。それが、名前がわかっていない多くの普通の人=庶民についても、その生活の中に入っていって、一緒に暮らしているような感じを味わおう、という関心と平行しているのが、ちょっと、うらやましいような気がしました。日本史についても、そんなものが出てきたら、歴史を勉強しようと思う社会人の方や高校生たちが増えるかもしれない、と思います。歴史は楽しく勉強を続けられるのが一番ですからね。(北野)