V&A Museum(2012年春イギリス調査旅行余滴2)

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     今日から夏時間になって、夕方が明るいままです。春分をすぎると、どんどん日足が伸びるのが北国ですが、朝がたは結構冷えて、最高気温が出るのは、夏時間だと、夕方の4時近くになります。仕事が終わってからの時間が楽しめるには違いないのでしょうが・・・体力がない上に早く目が覚めてしまうようになると、なんだか、ちょっと時間をもてあまします。

     宿からはVictoria and Albert Museum までわずか3駅であることに、初めて気づきました。実は、14年前に留学したときには入館料を取られたので、それきり、無縁のつもりでいたのですが、日曜の所在なさに、念のためウェブチェックしたところ入館料はなしになっていたので、気軽に出かけました。

     どちらかといえば、工芸の紹介に力点があるのですが、中世からルネサンスの工芸品のコレクションは、おそらく歴史的観点というよりも美術的技巧的観点から選ばれた、良いものがあります。どちらかといえば中世のものは少ないのが、ちょっと寂しいですけれども。規制の考え方がずいぶん変わっていて、どうも写真は撮り放題らしいことに、入ってから気づきましたが、カメラがないほうが、見ることに集中できるには違いありません。無料だし定宿から近いし、またくればいいや、と、気楽に見ました。

     ヨーロッパ規模だと15世紀までのコレクションですが、イギリスの生活用品ですと、むしろ、1500年以降のもののほうが、たくさん集められているようです。美術工芸なので、貴族とまではいかないにしても、upper classがお使いだったものがほとんどですが。そもそもそんな高級品でもないと伝来していないでしょうし。近世近代史専攻の方は楽しめると思います。建物が贅沢で、集められているものに「大物」が多いので(芝居で言えば大道具のたぐいですね)、展示の仕方もちまちましていなくて、気分はゆったりするようでした。

     ただ、趣旨はいわゆる歴史博物館ではないので、ショップには、展示されている中世の事物の絵はがきのようなものは一切ありません。ほしければやはり自分でカメラを持ってくるしかないようです。同じく、美術工芸の展示教育が主目的なので、展示されているものの歴史的由来の説明は、かならずしも十分ではありません。由来の脈絡から切り離されてしまった古い物というのは、美しいだけにかえって、なにか非常にもろい、寂しい感じがするような気もしますが・・・わたくしのほうが、ものに時間が乗っていることに存在感を感じる、という、あまり素直でないものの見方をするようになってしまっているのかもしれません。美術工芸品の蒐集としては、知って楽しむよりも、見て楽しむことが、やはり主眼なのでしょう。。。そもそも、それが、博物館の、正しい見学の仕方なのかもしれませんが。

     それにしても、昔はもう少し、古い時代の工芸品のレプリカもショップにあったような・・・ヴィクトリアンのものさえ、ありません。Arts and Crafts 以後のものの意匠を使った現代もののデザインが主です。工芸に力を入れていますから、お裁縫に使うようなものも少しはおいてあります。はさみとかものさしとかチャコとかピンとか・・・手芸好きさんにはいいのかも。

     今年が女王陛下のご在位60周年ですから、それ関係の特別展示もしています。疲れたので、そちらは見ませんでしたが、ショップに、普通はあまり見ない、お若いときの、非常に美しい写真が出ていました。プロの写真家が撮ったポートレートでしょうが。

     夏時間になった初日の11時、昨日まではこれが開館時間だったはずですが、駅からあまりに大勢のひとがぞろぞろ歩いているのでびっくりしたら、ほとんどが、自然史博物館のほうに曲がっていきました。子供が大勢・・・イギリスでも、恐竜は人気です。たしか昔は一時閉館になったこともあったと思いますが、子供は必ず一度は恐竜の化石を見たがるし、この国は、いつ来ても、どこから湧くの、と聞きたくなるくらい、3歳から7歳くらいの子供であふれているように見えるので、観客が途絶えることはないのでしょう。

     大英博物館が、どうも、いろいろなひとが手当たり次第に集めた、ものすごく貴重な物がたくさん集まっている巨大な物置のように感じられるのと比べると、蒐集も、展示も、相当に意識的なものと工夫が感じられて、それがうっとうしいというのでなければ、見終わったときの疲労感は、こちらのほうが少ないのではないかという気がします。

     滞在もあと数日です。月曜休館になってしまっているので、明日は日本に本を郵便で送ったら、することはあまりありません。郵便局まで段ボールひとつをどうやって持って行くかが問題ですが。なんどか休みながら行くしかなさそうです。これ以上買い物をすると、お持ち帰りになってしまうので、本屋にはもう行かないほうがよさそうだし。そのあとはぎりぎりまでNAで文書の写真撮りです。来たころに比べてずいぶん暖かくなりましたが、日本はことしも寒い春らしいので、着てきた服を着て帰っても大丈夫らしいのは、むしろ助かります。

    イギリスのマニュスクリプト講習会(2012年春海外調査余滴)

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       National Archivesのロッカールームには、NAだけでなく、いろいろな団体のパンフレットが置かれているのですが、そこで、イギリスのラテン・パレオグラフィーの案内を見つけました。Keel University で(North Staffordshireということですが、どこにあるのか、しりません。もとポリテクニークだったのかな)、今年の夏が35回目のようです。Latin and Palaeography Summer School 21-27 July 2012とあります。Family History をやっていて、ラテン語の古文書を読む必要があると考えているひと向けらしいことが書いてあります。
       中世ラテン語入門・中世古文書入門・16/7世紀の遺言書集・中級コース・1292年のランカシャー・エア・ロールというコース立て。宿泊コースだと、宿舎により750ポンドと720ポンド。一週間のコースとしては高くはないかも。通いだとディナーつきで420ポンド、ディナーなしで400ポンドという参加料金ですから。
       講師等の細かいことはビラ一枚のパンフレットには書いてありません。
      URLは、www.keele-conferencemanagement.com/lpss2012  のぞいてみるのもおもしろいかも。

       前にもお話ししたかもしれませんが、NAのホームページも、ラテン手書き文書・文字の講座のようなものがあります。あったはずだし、削除されていることはないだろうと思います。近世英語の手書き文字のパンフレットのようなものは、ショップで売っていますが、近世になると、だいたい推測が付くので、というか、実はブラック・レターのほうが、18,19世紀の鉄ペン書きの英語の文字より読みやすいような気もするので、これは、講習会まではいらないのだろうな、と思います。
       近代人の手書き文字が読みにくいのは、日本と同じかな。前回着たとき、MSS自体は読めるのに、これを整理した19世紀か20世紀はじめらしい目録の字が読めなくてこまりました。(北野)
       

      2012年春イギリス調査・文書館風景管見

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         予定では昨年秋だったのですが、忙しくて年度末に駆け込みで出国しました。まだNational Archivesに行っただけですが、1年ちょっとのあいだにあちこち改修工事が進んでいるようです。閲覧室の椅子が全部新調されていました。大型予算がついたのかもしれません。これはおそらく、Family Historyブームがどんどん進んで、来館者が増えていることによるものでしょう。今やbookshopの棚はほとんどがこれ関係の本で埋め尽くされています。19世紀のセンサス以来、国民に関する情報を多く持つ国で、いわゆる公文書保管ルールの期限がきたものは、すべて閲覧可能(誰でも、です)になっていることについて、個人情報を国が握るのはどうだの、それを閲覧者を選ばずに閲覧させるのはどうだの、という議論がある気配は、わたくしは感じたことがありません。みなさん、ご先祖とかご親戚とかがどういうひとで、自分までどうつながっているかを、楽しそうに調べているようです。。。。それを知ってどうするんだ、ということは、歴史に携わるひとには、意味のある質問ではないことがわかるだろうと思います。。。ですが、昔から、職業なり出身地なり、場合によっては姓なりの、「似たようなご先祖を持つ人友の会」があるのが、おもしろいところです。  自慢できるようなご先祖を持つ人だけが探求に来るのではないので、Family History 向けの本の棚に、今回、Criminal Ancestors という本をみつけました。もともと、お年寄りの会話から、先祖に犯罪で殺されたひとがいるほうが幅がきくらしい(幽霊になっていれば最高!)ことは察知していましたが、どうも、加害者のほうでも良いみたいです。  まあ、猟奇殺人の話が好きなだけではなくて、間欠的ながら実際に起こりもするお国柄ですから、国民性の一環なのかもしれませんが。  純然たる過去の話についてはブームがあり、去年はひたすらTudorsブームでしたが、今年はどうやら、タイタニック号沈没事件がブームのようです。映画かドラマがあったのでしょうか。それはまだ不案内です。もちろんWWIとIIはコンスタントなテーマです。ただし、いわゆる銃後の守りについてのコーナーは増えてきているようです。ジェンダー感覚の転換か、あるいは、女性のFamily Historyanが増えたことの反映なのか。20世紀全般が、個人の記憶の域を超えた、ひとつの歴史になっていく時期であることはまちがいないでしょう。訪れているお年寄りはもう、自分のこととしてではなく、上の世代のこととして、調べものをしているようです。  今後伸びていくテーマとしては、どうも、移民がありそうな気配。かつての植民地から、国策に沿って(もっと前だと、国策によって追放されて、になるわけですが)移住したひとたちの子孫が、ご先祖を調べに大挙してやってくる・・・かな。お天気が良い日と、そうでない日では、館内の混み具合が全然違うので、無理してまでやってくるひとは少ないように感じます。秋から冬は移動が難儀でないこと、夏は、館内は冷房が効いていることが、ひとが多い理由とみました。これからはきっと、来館者が増えることでしょう。。。。お年寄りが多いせいか、集団で来られるケースも多いせいかはしりませんが、Family Historian が多い日は、館内静粛は、事実上強行不能なルールです。自分の調べ物に集中したいひとは、ipod必携。どうせ音がするなら、好きな音楽のほうがいい、ということでしょう。それでも遮断は難しい音量でお話になるかたが多いですが。なまりのある英語だから中身まではわかりにくいのが救いのようではあるものの、後ろで長々と立ち話をされると、街角で調査しているような気分になってくるのもたしかで・・・わたしも、お天気が良い日は、iPodをもって出かけることにしようと思います。(北野)

        2011年度夏 イングランドにおける研究

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          今年のイングランド滞在は、中世ブリテン史研究会の巡見と連動したこともあり、7月15日から8月29日の長きにわたった。その間、Battle Conference (York: 7/28-8/1) に出席し活発な意見交換をおこなった。とくにNicholas Brooke教授の報告は革新的意義をもつもので、久しぶりに興奮を覚えた。今年度の滞在の一番の目的は、中世イングランド史における海民と漁業に関する研究のための史料収集と現在執筆中のThe moneyer in long-eleventh century Kentに関する史料収集である。以下続く(鶴島博和)

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