<< 歴史地図の扱いと3月のイングランド巡見 | main | Tudors, Tudors!(2010/11年調査余滴2) >>

中世史についての関心(2010/11年調査余滴1)

0
     滞在中に、文書館でも、まちの本やでも、中世史についての関心の高まりを示すような本をかなり見ました。この動向は去年あたりからはっきりしてきましたが、邦貨換算で2000円程度で買えるペーパーバックで、中世のひとびとの生活を生き生きと追体験させてくれるような「時間旅行もの」がいくつも出ています。ざっと覗いただけですが、内容はかなり正確で、こういう読み物があったら、大学で中世史を専攻しようと思う高校生がもっと出るかもしれない、と思いました。そのうち、奏文庫から翻訳を出版したいと思っています。本を決めるについても、翻訳作業についても、皆さまのお知恵をお借りすることが出てくると思いますので、そのときはよろしくお願いします。



     前投稿にもありましたが、その意味でも、古い地図をいろいろ眺められることはとても大切だと思います。それと現在の風景を比較できるともっと良いですね。イギリスの地方には、村のすがたや地名から、古い時代を再現することが比較的難しくない場所がいくつもあります。文書館に通っている一般の方が多いのは、ひとつには、利用が完全無料だからですが、もうひとつには、もともと家族史family historyの伝統があり、これが一般のひとびとの、ご先祖のことをもっと知りたい、という気持ちと合致したからです。でも最近、もうひとつ、自分が住んでいるところの昔のことをもっと知りたい、というlocal historyの関心からやってきている方も増えたようで、文書館所蔵の地図を広げているひとをよく見ます。



     もうひとつの、かなりはっきりした中世史の動向は、個人の伝記、とりわけ王や貴族の伝記という、20世紀中期頃まではかなり一般的だった著作が、またたくさん出始めたということです。偉い人、という観点からではなくて、もっと親しくなろう、という観点からのような印象で、以前の伝記に比べると、政治史よりも社会史や文化史に比重がかかったものになっているようです。20世紀後半から盛んになった社会文化史の研究動向が、個別の人物研究にまで浸透できるまでに一般的になった、という印象があります。



     その反面、もう少し堅い目の、制度や抽象的観念を掘り下げる研究が、全く見られないのは、少し心配なところです。しかしこれも、今そういったことについて出版の水面下で調査研究が進んでいるものと思われるので、数年後には、一見、いきなり現れた、というかたちで、そういった本が本やの棚やウェブの出版情報に並ぶものと思います。



     日本でも、日本史上の人物について、もっと親しくなろう、という感覚からの関心が高まっているようですが、イギリスでも同じような感覚があるのを感じます。それが、名前がわかっていない多くの普通の人=庶民についても、その生活の中に入っていって、一緒に暮らしているような感じを味わおう、という関心と平行しているのが、ちょっと、うらやましいような気がしました。日本史についても、そんなものが出てきたら、歴史を勉強しようと思う社会人の方や高校生たちが増えるかもしれない、と思います。歴史は楽しく勉強を続けられるのが一番ですからね。(北野)

    コメント
    コメントする









    この記事のトラックバックURL
    トラックバック
    calendar
    1234567
    891011121314
    15161718192021
    22232425262728
    2930     
    << September 2019 >>
    selected entries
    categories
    archives
    recent comment
    links
    profile
    search this site.
    others
    mobile
    qrcode
    powered
    無料ブログ作成サービス JUGEM